
🦷顎の痛みと歯ぎしりは同じ原因とは限りません
顎の痛み、口の開けにくさ、顎を動かしたときの音などは、顎の関節や顎を動かす筋肉の状態など、複数の要因によって生じることがあります。これらの症状がある場合でも、すべてが顎関節症とは限りません。
歯ぎしり・食いしばりには、睡眠中に起こるものと、起きている間に無意識に上下の歯を接触させるものがあります。ストレス、睡眠、飲酒・喫煙、生活習慣などが関係する場合がありますが、原因を一つに特定できないこともあります。
顎の痛みや歯ぎしりがある場合は、症状の経過、歯のすり減りや欠け、顎の動き、筋肉の状態などを確認し、症状に合った対応を検討することが大切です。
🦷顎の痛みや歯ぎしりで起こることがある症状
顎の痛みや歯ぎしりによる影響は、症状の種類や強さ、続いている期間などによって異なります。歯ぎしりをしていても、必ずしもすべての方に症状が現れるわけではありません。
- 顎の痛みや疲労感
顎を動かす筋肉や関節の周囲に、痛みや重さを感じることがあります。 - 口を開けにくい
大きく口を開けにくい、顎の動きに引っかかりを感じるなどの症状が生じる場合があります。 - 顎を動かしたときに音がする
カクカク、ジャリジャリといった音がすることがあります。音だけで痛みや開けにくさがない場合は、治療を必要としないこともあります。 - 歯のすり減りや欠け
歯ぎしりや食いしばりによる力が歯へ繰り返しかかると、歯がすり減ったり欠けたりする場合があります。 - 歯や詰め物・被せ物への負担
歯にひびが入ったり、詰め物や被せ物が欠けたり外れたりすることがあります。 - 起床時の顎のこわばり
睡眠中の歯ぎしりがある場合、朝起きたときに顎の筋肉の疲れやこわばりを感じることがあります。
強い痛みが続く、急に口が開かなくなった、顎をぶつけた後から症状がある、顔の腫れや発熱がある場合は、早めに歯科医院または医療機関へご相談ください。
🦷顎の痛みや歯ぎしりで確認する主な要因
1. 日中の食いしばりや顎の緊張
通常、安静にしているときは上下の歯の間にわずかな隙間があり、歯は接触していません。しかし、仕事や家事への集中、緊張、ストレスなどによって、起きている間に無意識に歯を接触させたり、強く噛みしめたりすることがあります。
こうした状態が長く続くと、顎を動かす筋肉の疲労や痛みにつながる場合があります。
➡ 主な確認・対応
- 日中に上下の歯を接触させていないか意識する
- 気づいたときは上下の歯を離し、顎と肩の力を抜く
- 長時間同じ姿勢を続けず、適度に休憩を取る
- 痛みを悪化させる硬い食べ物や大きな開口を一時的に控える
- 症状の経過や生活上のきっかけを記録する
- 痛みが続く場合は、歯や顎関節などほかの原因も確認する
2. 歯や詰め物・被せ物の状態
虫歯、歯のひび割れ、歯周組織の炎症、詰め物・被せ物の不具合などによる痛みが、顎の痛みとして感じられる場合があります。また、治療後に特定の歯だけが強く当たると、噛んだときに違和感や痛みが生じることがあります。
一方、歯並びや噛み合わせだけを、顎関節症や睡眠中の歯ぎしりの原因と断定することはできません。
➡ 主な確認・対応
- 虫歯、歯のひび、歯周組織の炎症がないか確認する
- 詰め物や被せ物の欠け、外れ、治療後の強い当たりがないか確認する
- 必要に応じてレントゲンなどで歯と周囲の状態を確認する
- 明らかな不具合がある場合は、その原因に応じた治療を行う
- 顎の痛みだけを理由に、健康な歯を大きく削る調整や矯正治療をすぐに行わない
3. 顎を動かす筋肉や顎関節の状態
顎を動かす筋肉の疲労や、顎関節・関節円板などの状態によって、顎の痛み、口の開けにくさ、顎を動かしたときの音などが生じる場合があります。
顎関節症にはいくつかのタイプがあり、症状や経過によって対応が異なります。音がするだけで痛みや開けにくさがない場合は、経過を確認することもあります。
➡ 主な確認・対応
- 痛む場所や症状が始まった時期、きっかけを確認する
- 口がどの程度開くか、顎がどのように動くか確認する
- 顎を動かす筋肉や顎関節周囲の状態を確認する
- 必要に応じて画像検査を検討する
- 症状に応じて、顎への負担を減らす生活上の注意や運動療法などを検討する
- 痛みや開けにくさが続く場合は、専門的な検査や治療を検討する
4. 睡眠中の歯ぎしり(ブラキシズム)
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、ご本人が気づいていないこともあります。家族から歯ぎしりの音を指摘されたり、起床時に顎の疲れを感じたり、歯のすり減りや欠けによって気づく場合があります。
睡眠中の歯ぎしりには、ストレス、飲酒・喫煙、睡眠の状態、服用している薬など、複数の要因が関係することがあります。
➡ 主な確認・対応
- 歯ぎしり音の指摘や、起床時の顎の疲れがないか確認する
- 歯のすり減り、欠け、ひび、詰め物・被せ物の状態を確認する
- 飲酒・喫煙、カフェイン、服用中の薬などについて確認する
- 必要に応じて、歯を保護するためのナイトガードを検討する
- 強いいびき、睡眠中の呼吸停止、日中の強い眠気がある場合は、医科への相談を検討する
ナイトガードは歯や詰め物・被せ物を保護するために使用しますが、睡眠中の歯ぎしりそのものを必ず止める装置ではありません。
5. 日常生活で気をつけたいこと
顎の痛みがあるときは、症状を悪化させる動作を一時的に控え、顎への負担を減らすことが大切です。ただし、すべての顎の痛みをセルフケアだけで改善できるわけではありません。
➡ 日常生活での注意点
- 上下の歯を接触させ続けないよう意識する
- 硬い食べ物や長時間の咀嚼を一時的に控える
- あくびなどで口を大きく開けすぎないよう注意する
- 頬づえやうつ伏せ寝など、顎に負担をかける姿勢を見直す
- 痛みの程度や口の開き方の変化を確認する
- 自己判断で強くマッサージしたり、無理に口を開ける運動をしたりしない
痛みや口の開けにくさが続く場合、症状を繰り返す場合は、歯科医院で原因を確認してください。
🦷まとめ
顎の痛み、口の開けにくさ、顎を動かしたときの音などには、顎を動かす筋肉や顎関節の状態、日中の食いしばり、歯や詰め物・被せ物の不具合など、複数の要因が関係する場合があります。
睡眠中の歯ぎしりも原因を一つに特定できないことがあり、歯のすり減りや欠け、起床時の顎の疲れなどを確認しながら対応を検討します。ナイトガードは歯を保護する目的で使用しますが、歯ぎしりそのものを必ず止める装置ではありません。
顎の症状は自然に軽くなる場合もありますが、強い痛みが続く、口が開きにくい、症状を繰り返す場合は、歯科医院で状態を確認しましょう。急に口が開かなくなった場合や、外傷、顔の腫れ、発熱などを伴う場合は、早めの受診が必要です。
この記事の編集・責任者は歯科医師の杉田一馬です。