
🦷親知らずはすべて抜く必要があるわけではありません
親知らず(第三大臼歯)は、上下左右の一番奥に生える永久歯です。まっすぐ生えて噛み合わせに参加し、清掃できている場合などは、必ずしも抜歯する必要はありません。
一方、斜めや横向きに生えている、歯の一部だけが見えている、周囲に汚れがたまりやすいなどの場合は、歯茎の炎症、親知らずや手前の歯の虫歯などにつながることがあります。
抜歯が必要かどうかは、症状の有無だけでなく、親知らずの位置や向き、周囲の歯への影響、清掃状態、年齢、全身の健康状態などを確認して判断します。抜歯によって得られる利点と、術後の痛み・腫れ、神経や上顎洞との位置関係などの注意点について説明を受けたうえで検討することが大切です。
🦷親知らずを残して経過を見る場合に確認したいこと
親知らずを抜かずに経過を見る場合は、親知らずと周囲の歯・歯茎の状態を定期的に確認することが大切です。問題が起こる可能性は、生え方や清掃のしやすさなどによって異なります。
- 親知らず周囲の歯茎の炎症
歯の一部だけが生えている場合などは、歯茎との間に汚れがたまり、腫れや痛みが生じることがあります。 - 親知らずの虫歯
一番奥にあるため歯ブラシが届きにくく、虫歯になる場合があります。 - 手前の歯への影響
親知らずとの間に汚れがたまると、手前の歯に虫歯や歯周組織の問題が生じることがあります。 - 嚢胞などの病変
骨の中に埋まっている親知らずの周囲に、まれに嚢胞などが生じることがあります。 - 炎症の繰り返し
一度症状が落ち着いても、同じ場所に腫れや痛みを繰り返す場合があります。
痛みや腫れが強い、口が開きにくい、飲み込みにくい、顔や首まで腫れている、発熱がある場合は、できるだけ早く歯科医院または医療機関へご相談ください。
🦷親知らずの状態と主な確認・対応
1. 親知らずの炎症(智歯周囲炎)
親知らずの一部だけが生えている場合などは、歯と歯茎の間に汚れがたまり、周囲の歯茎に炎症が起こることがあります。これを智歯周囲炎といい、痛み、腫れ、膿、口の開けにくさなどが生じる場合があります。
➡ 主な確認・対応
- 親知らずの生え方と周囲の歯茎の状態を確認する
- 炎症部分を洗浄し、お口の清掃方法を確認する
- 症状や感染の広がりに応じて、鎮痛薬や抗菌薬の使用を検討する
- 炎症を繰り返す場合は、症状が落ち着いた段階で抜歯を検討する
- 強い腫れや発熱、口の開けにくさがある場合は、早めに受診する
2. 隣の歯への影響
斜めや横向きの親知らずが手前の歯に接している場合、その間に汚れがたまりやすくなり、手前の歯に虫歯や歯周組織の問題が生じることがあります。また、親知らずの位置によっては、手前の歯の根に影響する場合もあります。
前歯の重なりや歯並びの変化には複数の要因が関係するため、親知らずがあるという理由だけで歯並びが悪化すると判断するものではありません。
➡ 主な確認・対応
- 親知らずと手前の歯の位置関係を確認する
- 親知らずとの間に虫歯や歯周組織の問題がないか確認する
- 必要に応じてレントゲンやCTで詳しい状態を確認する
- 手前の歯への悪影響が疑われる場合は、抜歯の必要性を検討する
- 問題がない場合は、定期的に状態を確認する
3. 親知らずや周囲の虫歯・歯周組織の問題
親知らずは一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくいことがあります。特に、斜めに生えている場合や一部だけが見えている場合は、親知らずや手前の歯に虫歯ができたり、周囲の歯茎に炎症が起きたりすることがあります。
➡ 主な確認・対応
- 親知らずと手前の歯に虫歯がないか確認する
- 親知らず周囲の歯茎や歯周ポケットの状態を確認する
- 歯ブラシや補助清掃用具が届く状態か確認する
- 治療や清掃によって維持できるか検討する
- 虫歯や炎症の治療が難しい場合や、再発の可能性が高い場合は抜歯を検討する
4. 骨や歯茎の中に埋まっている親知らず
親知らずが骨や歯茎の中に埋まっていても、症状がなく周囲に問題がなければ、抜歯せず経過を確認する場合があります。
一方、周囲に嚢胞などの病変がある、手前の歯に悪影響がある、炎症を繰り返しているなどの場合は、抜歯を検討します。
➡ 主な確認・対応
- レントゲンで親知らずの位置や向きを確認する
- 周囲の骨や手前の歯に問題がないか確認する
- 下顎の神経や上顎洞との位置関係を確認する
- 必要な場合にCTで詳しい位置関係を確認する
- 抜歯の難易度やリスクが高い場合は、口腔外科などへの紹介を検討する
- 抜歯しない場合は、定期的に状態の変化を確認する
5. 抜歯後のケアと回復
親知らずの抜歯後は、痛みや腫れ、少量の出血が生じることがあります。回復の経過や注意点は、親知らずの位置や抜歯方法、全身の状態などによって異なります。必ず担当医から受けた説明を優先してください。
➡ 抜歯後の主な注意点
- 指示された時間、清潔なガーゼを噛んで止血する
- 処方された薬は、指示された用法・用量を守って使用する
- 当日は強いうがいを繰り返さず、傷口を舌や指で触らない
- 麻酔が効いている間は、頬や舌を噛んだり、熱い飲食物でやけどしたりしないよう注意する
- 飲酒、喫煙、激しい運動、長時間の入浴は、指示された期間控える
- 食事は反対側で噛み、刺激の強いものや硬いものを避ける
- 冷やす場合は、担当医の指示に従い、長時間冷やし続けない
出血が止まらない、痛みが数日後から強くなる、腫れや発熱が悪化する、息苦しさや飲み込みにくさがある場合は、抜歯を受けた歯科医院へ連絡してください。
🦷まとめ
親知らずは、すべて抜歯する必要があるわけではありません。まっすぐ生えて機能しており、清掃できていて周囲に問題がない場合は、抜歯せず経過を確認することがあります。
一方、炎症を繰り返す、親知らずや手前の歯に虫歯・歯周組織の問題がある、嚢胞などの病変がある場合には、抜歯を検討します。
抜歯が必要かどうかは、親知らずの位置や向き、周囲の歯への影響、神経や上顎洞との位置関係、年齢、全身の健康状態などを確認して判断します。抜歯による利点だけでなく、術後の痛みや腫れなどの経過、起こり得る合併症について説明を受けることが大切です。
親知らずが気になる場合は、症状がないときでも一度状態を確認しておくと安心です。痛みや腫れが強い、口が開きにくい、飲み込みにくい、発熱がある場合は、できるだけ早く歯科医院へご相談ください。
この記事の編集・責任者は歯科医師の杉田一馬です。